映画「悪人」

注目の映画「悪人」を鑑賞しました。

この映画は、朝日新聞夕刊に連載され、毎日出版文化賞と大佛次郎賞を受賞した吉田修一の話題作を映画化した犯罪ドラマ。
九州のとある峠で起きた殺人事件をきっかけに、偶然に出会う男女が繰り広げる逃避行と愛を息苦しくなるほどリアルに描く作品。

ストーリーは、ある日、若い女性保険外交員の殺人事件が発生。
ある金持ちの大学生に疑いがかけられるが、捜査を進めるうちに土木作業員である清水祐一（妻夫木聡）が真犯人として浮上してくる。
しかし、祐一はたまたま出会った光代（深津絵里）を車に乗せ、警察の目から逃れるように転々とする。
そして、次第に二人は強く惹かれ合うようになっていく。

先日、深津絵里がモントリオール映画祭で最優秀女優賞を受賞され、予告編でも気になっていた作品だった事もあって、一体、どのような内容なのか興味をもって鑑賞。
重いテーマを扱った作品でしたが、実に中身の濃い、見応えのある作品でした。

この映画を通じて感じた事は、人間は身勝手な生き物だという事。
「悪人」と言うタイトルだけでもインパクト大ですが、そのタイトルが非常に考える事が多いものがあります。
一体、悪人とは誰の事を指しているのかも。

劇中内のセリフにもあったように、世間一般では殺人を犯した祐一が悪人とされるでしょう。
でも、作品内において祐一以外にも悪人が多数存在します。

祐一に殺される保険外交員の佳乃（満島ひかり）は世間では被害者になるのだが、彼女の本性は男を弄ぶ尻軽女であり、また性悪女である。
正直、佳乃の行動や言動はムッとするものばかりでしたから。
殺されてしまったのも自身の軽率な行動と言動がきっかけ。
佳乃のような悪人に出会わなければ祐一も殺人を犯す事はなかったでしょうね。

その佳乃が殺されるきっかけを作った増尾（岡田将生）も、またどうしようもない悪人である。
佳乃が殺された途端に遠くへ逃げ去っていたし、友人と一緒に飲んでいる時に死んだ佳乃を友人の前で嘲笑し、更には遺族である父の佳男（柄本明）が増尾に抗議しに来た事すら友人の前でバカにする。
増尾の行動や言動にもムッとさせられました。

殺人を犯して悪人になった祐一は、本来は面倒見が良く優しい性格。
佳乃を殺してしまった事には変わりないが、本当は道に置き去りにされた佳乃を助けようと自分の車に乗ることを勧めようとした。
しかし、増尾に捨てられて自暴自棄になっている佳乃に罵詈雑言を浴びられ、それに逆上してしまい取り返しのつかない事をしてしまう。
どんな理由があれ殺人はしてはいけないが、何だか理不尽さを感じるシーンでした。

その祐一と出会い系サイトを通じて交流し、行動を共にした光代。
殺人を打ち明けた祐一に対して引く事なく、一緒に逃亡しようとしたのだが、彼女も別の意味で悪人だったのではないかと思えてきます。
何故なら、警察に出頭しようとした祐一を止めようとしたからだ。
そうしてしまった事で祐一に新たな罪を増やしてしまった。
本当に祐一の事を考えるならば、そのまま警察に出頭させていたでしょう。

実力派の若手俳優とベテラン俳優を絡めたキャスティングの力もあって、作品の本質を観る側に伝えていたと思います。
６月に鑑賞した「告白」に匹敵する現代社会に一石投じるような作品。
人間の善の部分と悪の部分の使い分ける描写も印象的。
悪人とは誰なのか？
それは全ての人間なのかもしれません。

悪人
朝日新聞社
吉田 修一

ユーザレビュー:
テーマを勘違いしてい ...
『悪人』?タイトルは ...
強さを持つ大切さレビ ...

Amazonアソシエイト by

Comments

[たいむ]

こんにちは。
人間がみな悪人って同意見です。
でも、それだけでもない、そこがポイントですよねｗ

[FREE TIME]

＞たいむさん
こんばんは。
全ての人間が悪人にもなれるし善人にもなれます。
確かにそういう部分が重要なポイントですよ。