映画「この世界の片隅に」

映画「この世界の片隅に」を鑑賞しました。

この映画は、「長い道」「夕凪の街 桜の国」などで知られる、こうの史代のコミックをアニメ化したドラマ。
戦時中の広島県呉市を舞台に、ある一家に嫁いだ少女が戦禍の激しくなる中で懸命に生きていこうとする姿を追いかける作品。

ストーリーの舞台は1944年広島。
18歳のすずは、顔も見たことのない若者と結婚し、生まれ育った江波から20キロメートル離れた呉へとやって来る。
それまで得意な絵を描いてばかりだった彼女は、一転して一家を支える主婦に。
創意工夫を凝らしながら食糧難を乗り越え、毎日の食卓を作り出す。
やがて戦争は激しくなり、日本海軍の要となっている呉はアメリカ軍によるすさまじい空襲にさらされ、数多くの軍艦が燃え上がり、町並みも破壊されていく。そんな状況でも懸命に生きていくすずだったが、ついに1945年8月を迎える。

戦時中の広島を舞台にした作品ですが、物語の舞台は呉市。
戦時中は軍港として栄えていた街ですが、広島市から移り住んだ主人公のすずにとって、呉はどういう街に映ったのでしょうか?

物語はすずの少女時代から始まり、結婚して呉の海軍文官の妻となり、そして戦争に巻き込まれる。
戦時下、配給物資は減り、生活環境が厳しくなっていく中でも、すずは必至に生きていく。
戦争によって多くのものを失ってしまったが、それでもすずは強くなりたいと願う。

戦時中の厳しい生活の様子などはNHKの朝ドラでも、よく描かれているが、改めて見ても戦時中は理不尽な事がいろいろと多かったですね。
呉の港をスケッチしただけで憲兵からスパイ扱いされるなんてアホな話だし、軍港都市であるが故に呉が空襲の標的にされ続けたのも不快な話。
本当に戦争はロクなものじゃありません。
すずも戦争によって多くの大切なものを失ってしまったわけですから・・・。

連日、空襲に晒される呉での生活に我慢が出来なくなったすずは広島市の実家へ戻る事を決めるが、今度は広島市に原爆が投下されてしまう。
それにしても呉からも原爆投下時の光が見えたシーン、原爆の爆風によって家が揺れたシーンには悪寒を感じてしまいました。
ちなみに呉市と広島市は隣接していて、現在の広島駅から呉駅までの所要時間は約30分との事です。

私自身、広島には何度か訪れた事がありますが、広島へ訪れるたびに平和記念公園や資料館には訪れています。
広島へ来たからには避けて通れない場所ですから。
でも呉市は未踏の地なので、今度、広島を訪れた際には呉市にも行ってみたいですね。

ラストですずが夫・周作に語った「ありがとう。この世界の片隅にうちを見つけてくれて。」
このタイトルにもなっている言葉が最後に出てきた時に、何で「この世界の片隅に」というタイトルなのかがわかりました。
戦時中という厳しい時代の中で出会い生き抜いてきたすずと周作の間だからこそ言えるセリフではなかったかと思います。

主人公・すずの声を演じたのん(=能年玲奈)も声だけではありましたが存在感ありましたね。
久しぶりの表舞台だったけど、やはり彼女の才能を埋もれさせてはいけない事を再確認しました。


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この記事へのコメント

2016年11月28日 23:11
昭和20年も現代も人間の営みは基本的には大きく変わっていないもの。
けれど戦争という現実が生活に食い込んでくるかどうかだけが大きく違うもの。
そんな異常な日常を生きてこられた先人たちのおかげで今の我々の生活があると思うと、この映画は日本人として是非見るべき作品だと思いましたよ。
2016年11月29日 21:41
>にゃむばななさん
戦争で日本も大きく変わっていきましたからね。
その時代を生き抜いてきた人達がいるからこそ、今の日本があると思います。
上映館が少ないのが残念ですが、1人でも多くの日本人に観てほしい作品です。

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