映画「私にふさわしいホテル」

元日に映画「私にふさわしいホテル」を鑑賞しました。

この映画は、柚木麻子の小説を実写映画化。
大御所作家の酷評によりデビューを台無しにされ、小説発表の場を得られなかった不遇な新人作家の逆襲を描く作品。

ストーリーは、新人賞を受賞するも大御所作家・東十条宗典(滝藤賢一)に酷評され、小説発表の場も得られなかった新人作家・中島加代子(のん)。
東十条への逆襲を決意した彼女が憧れの「山の上ホテル」に宿泊した際、部屋の上階に彼が泊まっていることを知る。
大学時代の先輩である編集者・遠藤道雄(田中圭)の助けを借り、東十条の執筆を邪魔して締め切り日に原稿を間に合わなくさせることに成功するが、そこから加代子と東十条の因縁は思いも寄らぬ方向へと進んでいく。

2025年最初の映画鑑賞に選んだのは、この作品。
上映時間1時間38分と短いながらも、不遇な新人作家を主人公に、作家の本音や出版界の裏側を描いた内容が妙におかしく感じながら観ていました。

物語の始まりは、作家・相田大樹こと中島加代子が「山の上ホテル」にチェックインする所から。
山の上ホテルは東京に実在するホテルで、実際に作家が同ホテルに宿泊して執筆する事が多かったそうです。
でも、その山の上ホテルも今年2月に休館を迎えます。
これも時代の流れですかね。

この「私にふさわしいホテル」という作品。
てっきり「マスカレードホテル」のように終始ホテルを舞台にした映画なのかと思いきやそうではなし。
ホテル以外のロケシーンも出てきます。

加代子は新人賞を受賞したが単行本はまだ出せていない状態。
文豪が愛した山の上ホテルに自腹で宿泊し、いつかこのホテルにふさわしい作家になりたいと夢見る日々。

そこから山あり谷ありの連続。
同じタイミングで山の上ホテルに、自らの不遇の原因を作った東十条が上の階の部屋で執筆中と大学の先輩であり編集者の遠藤から聞くや、あの手この手で東十条への恨みを晴らそうとします。

その後も、自らが生き残る為にあらゆる手を使って東十条やその周辺の人物を丸め込もうとしたり、ライバルを蹴落とそうとします。
主人公が抱く嫉妬心には、どこか共感してしまいますね。
そんな加代子が実行する奇抜な作戦の数々には笑いがこみあげてきます。
理屈抜きに楽しませるだけでなく、嘘か真か、コネや政治力が物を言う文学界の理不尽さも描いているのが興味深かったです。
この映画は、まさに「文学界あるある」って感覚です。

主人公の加代子を演じたのん。
実に卓越したコメディエンヌぶりを見せてくれました。

この映画の中心人物を演じたのが、のん、田中圭、滝藤賢一の3人。
この3人が演じるキャラクター同士の掛け合いが、実に面白かったです。

ラストシーンは、再び加代子が「山の上ホテル」に宿泊する場面。
冒頭の違うところは、ホテルマンが加代子に「おかえりなさい」と声をかけるところか、加代子が部屋に入るや「ただいま」と言うところ。
これだけで加代子が作家として出世したかが分かる場面ですね。

尚、エンドロールが終わった後で次回作の予告編が流れてきます。
「私にふさわしいホテル」と同じ世界観で描かれる「早乙女カナコの場合は」。
主演は橋本愛でのんも有森樹李(本名は中島加代子)で出演と、「あまちゃん」コンビが見られます。
もっとも、「私にふさわしいホテル」でも橋本愛が出演していましたが。
果たして、次はどのような作品であるのか観てみたいです。

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